指導日記 #001 〜学年下位から上智大学へ、戻ってきた教え子の一年〜
その生徒は、小学生の頃に私の塾に通っていた子でした。当時から短期間でぐんと成績を伸ばした子で、卒塾していく生徒たちの様子を見ながら「高校生になったら、またヒロ先生のところに来る」と言ってくれていたのを覚えています。
中学の間は塾を離れ、友達との時間を思いきり楽しんだようです。それ自体は悪いことではありません。ただ、再会したのは高校3年生。成績は学年でも下位に近いところまで下がっていました。
久しぶりに会ったその子と、まず取り組んだのは現状の把握でした。小学生の頃の学び方の癖を私は覚えていましたから、どこでつまずいているか、どの分野が抜け落ちているかは、話を聞きながらすぐに見えてきました。そこから、この子に合った学習方法を一緒に組み立てました。
正直に言えば、出した宿題の量は多く、決して楽な一年ではなかったはずです。高3からの逆転には、それだけの量が必要でした。それでも、この子は「先生の言葉を信じる」と決めて、黙々と積み重ねました。小学生の頃に一度「やれば伸びる」を経験している子は、ここが強いのです。努力と結果がつながることを、体が知っているから。
成果は着実に現れ、一年で校内順位は2番まで上がりました。そして、上智大学に合格。早稲田・慶應の受験も予定していましたが、本人は上智の合格に満足し、晴れやかな顔で受験を終えました。
面白かったのは、その後に聞いた話です。友達に「どうしてそんなに成績が上がったの?」と聞かれても、この子は私の塾のことをずっと秘密にしていたそうです。「自分が合格するまでは、誰にも教えたくなかった」と。
指導者としては複雑ですが(笑)、これほどの信頼の証もありません。本気の生徒ほど、自分の切り札を隠したがるものです。きっと同じ気持ちで通ってくれている生徒は、他にもいるのだと思います。
そしてもう一つ、この子が教えてくれたことがあります。一度築いた学びの土台と信頼関係は、何年離れていても消えないということ。小学生のときに蒔いた種が、高3の一年で花になりました。
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